2017年3月24日金曜日

英語版ネットランナー購入ガイド2017

前回購入ガイドを投稿してから1年以上過ぎました。

この間、MWLという制限カードの導入や、新たに2サイクルがリリースされたこともありかなり環境が変化しました。また、半年後には初のローテーションも予定されています。

前回は「全部一気に買わなくても、半分も揃えれば満喫できるよ」ということで、ゲームを始めたての方向けの参考にでもなればという思いで記事を書きました。

今回更新するに際して、全体を知らない新規参入向けだけでなく、復帰した人やお付き合いでやる人など、様々な背景に配慮したいと思いました。そして拡張に求める内容の違い、例えば大会で勝てるガチなデッキがいいとか、好きな陣営だけ揃えたいとか、お気に入りのデッキを強化したいなどスタイルを反映するにはどうすれば良いか考えました。

データパックの紹介とカード評価とは別に、どのようにデッキを構築するかという目線の違いによるコメントをつけることにしました。全体としては長くなりますが、参考になれば幸いです。

まずは商品展開やゲーム環境の変化について解説します。

ローテーションについて


FFG社は2014年にLCG製品に関してローテーションを設定すると発表しました。拡大し続けるゲーム環境は健全に保つのが難しく、初心者の参入が難しくなるからというのが理由です。

ローテーションは(環境上に残る)8番目のサイクルのリリース時に、一番古いサイクルと二番目に古いサイクルの2つが同時に落ちるというものです。大拡張はローテーション落ちはしません。常に5〜7サイクル分のカードを利用可能で、それ以上カードプールは増えないということです。


なぜ2サイクル同時に落ちるのか?というのは疑問に残りますが、2サイクル分はおよそ1年分のリリースに相当すると考えれば、1年ごとにローテーションするという意味合いなのかと思います。

具体的には2017年の秋頃に8番目のサイクルがリリースされる予定ですが、その際にGenesisサイクルとSpinサイクルが同時にローテーション落ちするということです。以降、同様に1年ぐらいの間隔で2サイクル増えて、2サイクル落ちるを繰り返します。


と、ローテーションについて説明しましたが、自分は以下の理由で気にすることはないと考えています。

  1. 実際にローテーションをさせるかは分からない(FFG社はAsmodee社に吸収合併され、当時の方針が有効か分からない為)
  2. 日本では今の所、FFG公式大会は存在しない
  3. 今、試したいデッキがあるなら、今、拡張を買うしかない!

日本に於いては輸入品な上に結構な数の拡張が出ていて揃えるのに費用が掛かるこのゲームに部分的でも参加してもらえるだけで、既存プレイヤーはありがたいと思っています。そういった理由で、各プレイヤーごとの状況に出来るだけ合わせるように、周りの熟練プレイヤー達も配慮してくれますので、まずは自分の気に入ったデッキが組めるように集めてくれればと思います。

MWLについて


2016年1月より制限カードリストとなるMost Wanted List(通称MWL)が導入されました。詳しくはコチラを参照してください。

この制限リストがどれほど環境に影響したかというと、環境上位にあったデッキをいくつも構築不能に追いやりました。有名どころでは、Astro SanSanと呼ばれた最強のファストアドバンスデッキは《AstroScript Pilot Program (Core Set)》と《SanSan City Grid (Core Set)》の制限やエラッタにより消滅(《AstroScript Pilot Program (Core Set)》がデッキ1枚制限になったため)、Eventのクレジットカードを《Pre-Paid Voice PAD (Second Thoughts)》でプレイして高速で大量のクレジットを稼ぐPre-Paid Kateは《Pre-Paid Voice PAD (Second Thoughts)》や《Clone Chip (Creation and Control)》の制限により価値を失って壊滅しました。

ところで、私はこの制限リスト(の仕組み)が良かったのかは未だに分かりません。一部の強デッキは確かに消えましたが、Net Deckのようなアプリなしには構築する気が起きない程に面倒になったと思います。(私は日本語版のみの環境ならMWLは無視した方が良いと思いますし、チャンピオンデッキを崩したりする必要はないと考えています)

今回のパック評価にMWL1.1の内容をつけました。MWL自体は近々改定される予定なので、そちらもチェックしてください。

購入ガイド


はじめに

前回の購入ガイドは、初心者向けにできるだけ情報を減らして伝えるように工夫しましたが、今回は全拡張の評価を現在の環境を基準に行いました。

評価はトーナメントでの上位デッキの分析を行っている Know The Meta の統計情報を参照し(以前は自前で集計したものを利用していました)、上位のデッキに採用されていたり、全体で採用率が高いカードが多く入った拡張を高得点としています。トーナメント上位にないがデッキタイプとしては有名で使われているカードといった、汎用性の低いカードを含む拡張は得点ではなく、コメントにより評価しています。

また勝手ではありますが、デザインテーマや環境上の立ち位置などユーザー視点で感じた内容もコメントしています。

構築スタイル

デッキの作り方は様々ですが、典型的には以下のようなスタイルがあると思います

  1. 流行りのデッキをコピーする、ネットデック(NetDeck)構築スタイル
  2. ベースのデッキを差し替えて強化する、グッドスタッフ(Good Stuff)構築スタイル
  3. 好きな陣営(faction)で構築する、カラー構築スタイル
  4. あらゆるカードのコンボを研究したい、やり込み型構築スタイル

私はネットランナーの構築スタイルとしては(4)のやり込み型構築スタイルになります。全部のカードを一回は使いこなしてやろうというモチベでやっています。とは言え、初期はNetrunnerDBのようなサイトから優勝デッキなり面白そうなデッキをコピーして廻していたので、最初は(1)の構築スタイルでした。

今回は、それぞれのスタイルに合うように意識して評価やコメントをしています。例えば、特定のデッキをコピーする場合に参考になるように、キーカードが含まれている拡張のコメントに有名なデッキのリンクを貼ったりしています。

サイクル

現在7サイクルが販売されています。

  1. Genesis (2012/12 ~ 2013/6)
  2. Spin (2013/10 ~ 2014/3)
  3. Lunar (2014/7 ~ 2014/12)
  4. SanSan (2015/4 ~ 2015/9)
  5. Mumbad (2016/1 ~ 2016/6)
  6. Flashpoint (2016/7 ~ 2017/1)
  7. Red Sand (2017/2 ~ 現在)
リリースは月に1回サイクルは6個なので、6ヶ月で1サイクルが出ることになっています。サイクル間は大拡張が出ていましたが、今の所はキャンペーン拡張(Campaign Expansion: Terminal Directive)が、従来の大拡張に相当するものになると予想されます。

全体的に言えば、サイクル内でシナジーを形成することは稀なため、サイクルを揃えるよりは気に入った拡張を選んだ方が初期段階では良いと思います。

注意事項(?)

拡張1個買ったら、2個買うのも同じだし、結局は全部揃えちゃうと思いますよ(*´罒`*)
(が、何かしらの優先順位の参考にでもなれば...と思います)

ランキング

Know The Metaのトーナメント上位に含まれる割合から点数化(>50%: 16点、>25%: 8点、>13%: 4点、>7%: 2点、>4%: 1点、残り0点)として独自に集計したデータパックランキングはコチラで参照できます。



購入オススメ順

これから拡張を揃える人には、次のような順番をオススメしています

大拡張4種 → チャンピオンデッキ2種 → 小拡張(随時)

大拡張


大拡張を勧めるのは、カードの揃い方がまとまっていてデッキを組みやすく対戦しやすいからです。また汎用的なキーカードが多く含まれているため、気に入った陣営があるならばその大拡張は必須と言えます。

中でもCreation and Controlはランナーの中立(Natural)パーツが豊富で長期的に使われるカードが多いです。例えば《Daily Casts (Creation and Control)》《Dirty Laundry (Creation and Control)》《Same Old Thing (Creation and Control)》など、トーナメント上位での採用率が50%以上です。

Data and Destinyだけはデッキを構築するために中立(Natural)カードを沢山必要とするため購入を後回しにした方が良いと思います。

チャンピオンデッキ


現在は2015年の世界大会優勝デッキ(チャンピオンデッキ)のランナー、コーポの2種が販売されています。

Jackson Howard (Opening Moves)》、《Global Food Initiative (Data and Destiny)》のようなコーポの採用率が80%を超えるカードも入っていますし、カードもフルアート(枠なし)なのでコレクション性も高いものとなっています。ランナーは《Daily Casts (Creation and Control)》や《Same Old Thing (Creation and Control)》などが入っているため、大変お得です。

完成済みデッキなので構築幅を単独で持ちませんが(そしてランナーデッキはかなり特殊です)、クレジット源のカードや汎用的な計画書(Agenda)が入っているため複数デッキを作る際にも都合の良いパックと言えます。

小拡張

トーナメントの上位デッキの採用率を元にカードごとにポイント方式でランキングを作りました。
以下では、そのランキング上位のパックについて解説します。(カッコ内は評価と注目カード)

必携パック

1. Blood Money (Flashpoint) (☆☆☆☆☆) (《Temüjin Contract》《Paperclip》《Rumor Mill》《Beth Kilrain-Chang》)
2. Future Proof (Genesis) (☆☆☆☆) (《R&D Interface》《Eli 1.0》《Project Beale》《Faerie》《Midseason Replacements》)
3. Quorum (Flashpoint) (☆☆☆☆) (《Aaron Marrón》《Şifr》《Macrophage》)
4. What Lies Ahead (Genesis) (☆☆☆☆) (《Plascrete Carapace》《Imp》《ZU.13 Key Master》《Ash 2X3ZB9CY》)
5. Martial Law (Flashpoint) (☆☆☆☆) (《MKUltra》《Friends in High Places》《IP Block》)

これらは陣営(faction)を選ばず採用率の高いカードを含むパックとなります。

ローテーション落ちをするとは言え、現状もGenesisサイクルにある3/2計画書(Agenda)が重要な状況は変わりません。リスクと得点の配分としては依然として優秀で、またデッキに計画書(Agenda)を必ず入れなければならないからです。Genesisサイクルをローテーション落ちという理由で購入しないならば、3/2計画書(Agenda)のポジションは《Corporate Sales Team (Business First)》が代わりになると思います。

Blood MoneyとQuorumはどちらもランナーのカード強く最強クラスのものが封入されています。《Temüjin Contract (Blood Money)》を筆頭にしたパワーカードがどういう点で良いかというと、プレイの幅も構築の余裕も広げてくれることだと私は感じています。

初心者の方は、まずクレジット源がとにかく豊富なデッキを廻して、クレジットでリスクが回避できるプレイを身につけるとストレスなく対戦できて良いと思います。それからインストールするカードやレゾするカードを増やしていくと、適切なトレードオフの地点が見えてくると思います。クレジットが枯渇してしゃがむだけのターンとかはどう考えても面白くありませんから...(^^;

汎用パワーカードパック

6. Double Time (Spin) (☆☆☆☆) (《NAPD Contract》《Caprice Nisei》《Lucky Find》《Quandary》)
7. Salsette Island (Mumbad) (☆☆☆☆) (《Salsette Slums》《Cobra》《Sports Hopper》《Jeeves Model Bioroids》《Mumbad Virtual Tour》)
8. Opening Moves (Spin) (☆☆☆☆) (《Jackson Howard》《Celebrity Gift》)
9. Escalation (Flashpoint) (☆☆☆☆) (《Black Orchestra》《BOOM!》《Fairchild 3.0》)
10. The Liberated Mind (Mumbad) (☆☆☆☆) (《Exchange of Information》《Vanilla》《Rebirth》《The Turning Wheel》)

これらはデッキや陣営をある程度選ぶものの、広く使われているパワーカードが含まれているパックです。

Jeeves Model Bioroids (Salsette Island)》《BOOM! (Escalation)》《Exchange of Information (The Liberated Mind)》はデッキコンセプトになるカードで、トップメタでもあります。

Quandary (Double Time)》や《Vanilla (The Liberated Mind)》といった「ランの終了」を持つ低コストアイス(ICE)は広く使われています。

グッドスタッフパック

11. Democracy and Dogma (Mumbad) (☆☆☆☆) (《Sensie Actors Union》《Political Operative》《Commercial Bankers Group》)
12. Breaker Bay (SanSan) (☆☆☆☆) (《Career Fair》《Turing》《Breaker Bay Grid》《Crick》)
13. Humanity's Shadow (Genesis) (☆☆☆☆) (《Kati Jones》《Quality Time》《Eve Campaign》)
14. Cyber Exodus (Genesis) (☆☆☆☆) (《Pop-up Window》《Project Vitruvius》)

これらはパックのコンセプトが良く、広く採用されるグッドスタッフの多いパックです。

Politicalの資財(Asset)を持つDemocracy and Dogma、サーバー指定型アイス(ICE)を持つBreaker Bayはカードデザインの良さからどの陣営のカードも採用されています。

またトップレベルの強さはないものの《Career Fair》や《Kati Jones》などクレジット源となるカードは採用率が高いです。

陣営毎のオススメ

ここから先はIDで選んだり、デッキのコンボパーツとして選んだりすることになると思います。ここでは陣営で良く使われるカードとそのパックを示します。ここまで紹介した小拡張は含みませんので、次なるパックを選択する際の参考にしてください。

Anarch: The Underway /《Faust》, The Valley /《Clot》(メタカードとして)
Criminal: Kala Ghoda /《Mongoose》, Daedalus Complex /《Exploit
Shaper: All That Remains /《Cerberus "Lady" H1》, Old Hollywood /《Film Critic》(メタカードとして), True Color /《Sharpshooter

HB: Up and Over /《Architect》, The Universe of Tomorrow /《Team Sponsorship
Jinteki: Upstalk /《Lotus Field》, Trace Amount /《Fetal AI
NBN: True Colors /《Sweeps Week》,  Fear and Loathing /《Wraparound》, All That Remains /《Daily Business Show》、23 Seconds /《Hard-Hitting News
Weyland: First Contact /《Crisium Grid》, Daedalus Complex /《Oberth Protocol》, Chrome City /《Oaktown Renovation

個別のサイクル評価

トレンドを反映してパック毎にコメントをつけています。ご参考になれば幸いです。

  • Mumbad サイクル評価(作成中)
  • Flashpoint サイクル評価(作成中)
  • Red Sand サイクル評価(作成中)


おわりに


私もミニチュアゲームというものを最近始めてみて思ったのですが、歴史のあるゲームに途中から参加する場合やゲーム全体を追っかける(購入する)のが難しい場合に、どうしたら良いかはかなり悩みます。特にゲームのパワーバランスや拡張のコストパフォーマンスは、当たり前ですが初心者には分からないことです。

なので「みんなが使っている!」「強い!」とだけ書きました。ネットランナーに於いては、ほぼ強いカードはデッキの廻りとプレイの幅を持たせるカードです。そういった意味でも、まずいくつかのクレジット源とドロー系のカードを揃えてから、後はカード毎の興味で揃えていくのが良いと思います。逆に言えば、パワーインフレで追いつけないほどカードパワーが離れているということは今のところありません。

「なんで、このカード印刷されたんだ?...」となったら、もうこの沼からは抜け出せません、気をつけて下さい(๑˃̵ᴗ˂̵)و

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